
不動産投資で一定規模になると「法人化」を検討するタイミングが来る。所得税の節税効果、経費計上の幅の広がり、家族への給与支払いによる分散効果——これらを考えると、法人化は収益をひと回り大きくする有力な選択肢だ。
ところが「法人設立」と聞くと、書類の多さや手続きの複雑さに尻込みする人が多い。実際には、オンライン法人設立サービスを使えば最短1〜2週間で会社を作れる時代になっている。
本記事では、大家業(不動産賃貸業)での法人化に向けて、主要な法人設立サービス3社を比較する。
なぜ法人化を検討するのか
節税効果が大きい
個人の所得税は累進課税で、課税所得が900万円を超えると税率33%を超える。一方、中小法人の実効税率は概ね20〜25%程度。所得が増えるほど法人化の節税メリットが大きくなる。
また、法人化すると「役員報酬」として自分に給与を払えるため、給与所得控除(最大195万円)を活用できる。これが個人との大きな違いだ。
経費計上の幅が広がる
法人では以下のような経費が認められやすくなる:
- 役員(自分)の生命保険料の一部
- 自宅の一部を事務所として経費計上
- 車の経費(法人名義での購入・維持費)
- 交際費(年800万円まで損金算入可)
相続・承継の準備にもなる
物件を個人名義で持ち続けると相続時に複雑になる。法人名義にしておくと株式の相続という形になり、分割や承継がスムーズになるケースが多い。
法人設立に必要な基本知識
法人設立には「定款の作成・認証」「登記申請」「各種届出」が必要になる。これをすべて自力でやろうとすると、法務局・公証役場の往復と膨大な書類作成で2〜3ヶ月かかることもある。
オンライン法人設立サービスは、この手続きの大部分をサポートしてくれる。具体的には:
- 定款の作成支援(テンプレートと質問形式で自動作成)
- 電子定款の認証代行(公証役場への提出を代行)
- 登記申請書類の自動生成(法務局への提出書類を準備)
- 各種届出のガイド(税務署・都道府県への届出方法を案内)
主要3サービスの比較
比較表
| 項目 | freee会社設立 | マネーフォワード会社設立 | 弥生のかんたん会社設立 |
|---|---|---|---|
| 料金 | 無料 | 無料 | 無料 |
| 電子定款手数料 | 0円(代行込) | 0円(代行込) | 0円(代行込) |
| 最短設立期間 | 約1〜2週間 | 約1〜2週間 | 約1〜2週間 |
| UI・操作性 | ◎ 直感的 | ○ | ○ |
| 設立後の会計連携 | freee会計と一体 | MFクラウドと一体 | 弥生会計と連携 |
| 法人種類 | 株式・合同 | 株式・合同 | 株式・合同 |
| サポート | チャット・電話 | チャット | メール |
| 設立実績 | 100万社以上 | — | 老舗・実績豊富 |
いずれも設立サービス自体は無料(実費として印紙代・登録免許税は別途必要)。本記事では主に使い勝手と設立後の会計連携の観点で比較する。
各サービスの特徴と向いている人
1. freee会社設立(フリー株式会社)
freee会社設立の最大の強みは、設立後の会計業務との一体感だ。設立時に入力した会社情報が、そのままfreee会計の初期設定に引き継がれるため、設立直後から経理作業をスムーズに始められる。
向いている人:
– 設立後にfreee会計を使う予定がある人
– 操作をガイドに沿って進めたい初心者
– 設立後すぐに帳簿・確定申告を自力でやりたい人
注意点:
– 設立後にfreee会計を使わない場合、連携メリットが薄れる
2. マネーフォワード会社設立(マネーフォワード)
マネーフォワード会社設立は、設立後のクラウド会計「マネーフォワード クラウド会計」との連携が売りだ。法人向け機能(経費精算・給与計算・請求書)も揃っており、従業員が増えた場合にも対応できる。
向いている人:
– 設立後にマネーフォワードを使う予定がある人
– 経理・人事まで含めた業務を一括管理したい人
– 従業員を雇用する予定がある法人
注意点:
– 個人大家レベルでは過剰スペックになりやすい
3. 弥生のかんたん会社設立(弥生株式会社)
弥生は会計ソフト業界で30年以上の実績を持つ老舗。「かんたん会社設立」は質問に答えるだけで登記書類が作成できる設計で、操作の難しさはほとんど感じない。設立後は弥生会計・やよいの青色申告への移行もスムーズ。
向いている人:
– 弥生シリーズをすでに使っている人
– シンプルな操作で確実に設立したい人
– 税理士と一緒に使うことを想定している人
注意点:
– 設立後の自動化・API連携機能はfreee/マネーフォワードに比べてやや少ない
実費としてかかるコスト
法人設立には、サービス料が無料でも実費がかかる。
| 費用項目 | 金額目安 |
|---|---|
| 定款認証手数料(公証役場) | 約5万円(電子定款なら3万円) |
| 登録免許税(法務局) | 株式会社15万円 / 合同会社6万円 |
| 合計(電子定款・合同会社) | 約9万円〜 |
電子定款を使うと紙の印紙代4万円が不要になる。オンライン法人設立サービスはほぼすべて電子定款に対応しているため、実質的に節約できる。
大家業での法人形態:株式会社 vs 合同会社
不動産賃貸業で法人化する場合、「株式会社」か「合同会社」かでも迷う。
| 比較点 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 設立費用 | 約20〜25万円 | 約10万円 |
| 社会的信用 | 高い(取引先・金融機関) | やや低い |
| 意思決定 | やや複雑(取締役会等) | シンプル |
| 金融機関からの融資 | 受けやすい | やや難しい場合あり |
不動産投資で金融機関から融資を受ける予定がある場合は株式会社が無難。融資審査で「株式会社か否か」を見る機関が一部あるため、将来の融資計画も考慮して選ぶ。
設立後にやること
法人設立は「会社を作ること」がゴールではなく、スタート地点だ。設立後には以下が待っている:
- 税務署・都道府県・市区町村への届出(設立から2ヶ月以内)
- 社会保険への加入手続き
- 法人口座の開設(メガバンク・信用金庫・ネット銀行)
- 会計ソフトの初期設定
- 既存物件の法人への移管(売買or現物出資)
この中でも「4. 会計ソフトの初期設定」を早期に完了させることで、経費管理の漏れが防げる。freeeやマネーフォワードを設立サービスと合わせて使うと、この移行が最もスムーズだ。
まとめ
3サービスのいずれも設立サービス自体は無料で、品質面での大きな差はない。選ぶ基準は「設立後に使う会計ソフト」で決めるのが最もシンプルだ。
- freee会計を使う → freee会社設立
- マネーフォワードを使う → マネーフォワード会社設立
- 弥生を使う/税理士と連携 → 弥生のかんたん会社設立
個人大家から法人化するステップとして、まず設立サービスの無料シミュレーションを試してみることをおすすめする。手続きの全体像が見えるだけで、「自分でできる」という自信がつく。
▶ クラウド会計 freeeで確定申告を自動化
freee会計は銀行口座・クレカと自動連携して仕訳を自動化。不動産投資の経理に最適。30日間無料。
※本リンクはアフィリエイトリンクです