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事故物件、いくらなら買う?──現役大家が”告知物件”を数字で査定する手順

「告知事項あり」と書かれた物件を前にしたとき、多くの人は感情で立ち止まる。怖い、気が引ける、家族に反対される——それは自然な反応だ。だが大家として仕入れるなら、立ち止まる場所は感情ではなく数字であるべきだ。

先日、群馬県内で「告知事項あり(数年前に居室内で死亡)」の物件が売りに出ていた。木造4LDK・築約30年・敷地約40坪の整形地で、前面は6mの公道に接道、再建築も可。売出価格は850万円だった。

この物件を「いくらなら買うか」。私の頭の中で回っている査定の手順を、そのまま順を追って公開する。事故物件は怖がるものではなく、淡々と値付けする対象だ。


目次

ステップ1:まず土地値を出す

事故物件の査定は、建物や事故の話を一旦脇に置いて、土地だけでいくらかを出すところから始まる。築約30年の木造に市場価値はほぼ残っていないので、本質的には「土地を買う」話になるからだ。

土地値の出し方はシンプルで、相続税路線価を使う。

実勢土地値 ≒ 路線価(円/㎡)× 敷地面積(㎡)÷ 0.8

このエリアの路線価は約35,000円/㎡だった。敷地は約40坪=約132㎡。

35,000円 × 132㎡ ÷ 0.8 = 約577万円

ざっくり590万円前後、坪あたり約14万円が実勢の土地値ということになる。路線価は国税庁の「財産評価基準書 路線価図」で誰でも無料で確認できる。接道している道路の上に書かれた数字(千円単位)を読むだけだ。

ここでのポイントは、路線価が実勢価格の約8割を目安に設定されているため、÷0.8で逆算して実勢レンジに戻していること。この一手間を省くと土地値を2割安く見積もってしまう。


ステップ2:建物の評価とコストを足し引きする

築約30年の木造戸建ては、査定上の建物価値はほぼゼロと見る。問題は「これからどう使うか」で必要なコストが変わる点だ。

  • 活用する場合:水回り・内装のリフォームに概ね200〜250万円。状態次第ではもっと膨らむ。
  • 更地化する場合:木造戸建ての解体に概ね150〜200万円。前面6m公道で重機が入りやすい立地なら下振れも期待できる。

つまり土地値590万円は「裸の土地」の値であって、実際にはここから活用費か解体費が乗る(あるいは引かれる)。買う側の論理で言えば、解体費150〜200万円は土地値から差し引くべきコストになる。


ステップ3:心理的瑕疵をどう減価するか

ここが事故物件査定の核心だ。心理的瑕疵、いわゆる告知事項をいくら割り引くか。

判断のベースになるのが、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」だ。賃貸では、自然死や日常生活の中での不慮の死は原則告知不要、いわゆる事案でも概ね3年経過後は告知不要とされる方向が示されている。一方で売買には、この「3年」の区切りが明確に置かれていない。買主にとって生涯にわたる重大な購入判断であるため、売買では原則として告知義務が残ると考えておくのが安全だ。

つまり「数年経ったから消える」と楽観してはいけない。出口でも告知が必要になる前提で値付けする。

実務上の減価の目安はこうだ。

  • 売買での減価:相場から概ね▲20〜30%。事案の内容・経過年数・地域性で振れる。
  • 賃貸での減価:賃料が相場の概ね7〜8割に下がる。さらに客付けの対象が限られ、空室期間が延びやすい。

重要なのは金額だけでなく「出口が細くなる」という質的な影響だ。買える人・借りる人の母数が減るので、同じ値段でも流動性が落ちる。これは数字に表れにくいが、確実に効いてくるリスクだ。


ステップ4:出口別に判断を分ける

事故物件は「どう出口を取るか」で買える値段が変わる。私が想定する出口は3つだ。

出口A:賃貸ホールド

告知した上で賃料を相場の7〜8割に下げて回す。利回りが土地値に対して十分なら、長期保有で家賃を積み上げる戦略。客付けの弱さを賃料で吸収する考え方だ。

出口B:更地化して整形地として売る

建物を解体し、再建築可の整形地として売却する。新築が建てば心理的影響が薄まりやすく、土地としての買主に売れる利点がある。前面6m公道・整形地という条件はこの出口と相性が良い。解体費を織り込んでも土地値で出口が立つかを見る。

出口C:買取再販(リフォーム転売)

これは非推奨。リフォームして実需に売るモデルだが、告知物件は最終の買主(マイホーム実需層)が最も嫌う層と重なる。出口の買主が限られ、値引き合戦になりやすい。事故物件と買取再販は基本的に食い合わせが悪い。


結論:850万は「土地値割れ」していない=割高

整理しよう。

  • 実勢土地値:約590万円
  • 解体費:▲150〜200万円(更地出口の場合)
  • 心理的瑕疵の減価:相場から▲20〜30%

売出850万円は、裸の土地値590万円をすでに260万円も上回っている。事故物件は土地値以下で拾えてこそ妙味が出る商品だ。瑕疵と建物・解体コストを引いた水準で指値を組むと、現実的なラインは土地値590万円からさらに解体費と瑕疵分を引いたおおむね350〜450万円になる。

850万円の売出に対してこの指値が通るかは別の話だが、少なくとも「数字の根拠なく850万円で掴む」ことだけは避けられる。


一般の方が真似できる5項目チェックリスト

事故物件を検討するとき、最低限ここだけは数字で押さえてほしい。

  1. 路線価から土地値を出す(路線価×面積÷0.8)。建物・事故は一旦置く。
  2. 解体費・リフォーム費を見積もる(木造戸建てなら解体150〜200万円が目安)。
  3. 告知義務を確認する。売買では原則告知が残る前提で、相場から▲20〜30%。
  4. 出口を1つに決める。賃貸ホールドか更地売りか。買取再販は避ける。
  5. 土地値以下で指値を組む。土地値を超える売出は、事故物件である限り原則見送り。

感情で語ると高く買い、数字で語ると安く買える。事故物件こそ、この差がはっきり出る領域だ。


「自分の地域の相場が分からない」という段階なら、まず無料の一括査定で実勢レンジを掴むのが早い。

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複数社の査定を並べると、その土地に告知の影響がどれだけ乗っているか、相場のどのあたりに着地するかが見えてくる。事故物件の値付けも、まずは「普通に売ったらいくらか」を知ることから始まる。数字を握ってから、淡々と指値を入れよう。

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この記事を書いた人

群馬県で活動している不動産農民です。不動産投資について、サラリーマンの傍ら、法人を立ち上げて1人社長で賃貸業を行っております。皆様の少しでもお役に立てるよう有益な情報を発信できればなんて考えています。よろしくお願いします。あとは、ガジェットやバイク、車も好きなのでその辺も発信できればと思っていますのでよろしくお願いいたします。

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